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参加レポート:弁護士が教える「ビジネスと人権」


2024年10月11日、大阪産業創造館でJLPの定例会が行われました。

講師は弁護士の中島さんでテーマは「ビジネスと人権」についてでした。

最近このビジネスと人権というテーマでのセミナーが非常に多いとのことでした。中島さん自身、様々なセミナーを今後予定されているということでした。

「ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償」という2015年の映画の予告の動画を流していただきました。この予告では、ファストファッションとして主に先進国で消費される衣料品の原料を調達するため、発展途上国の住民を非常に劣悪な環境で働かせているということが明らかになっていると解説されました。

まず、ビジネスと人権に関しては、バングラデシュで起こったラナ・プラザ事件(縫製工場が多数入っているビルが崩落した事件)というのが非常に印象的でした。ラナ・プラザの悲劇から学べることとして、衣料品部門では、労働者の格安賃金のため下方圧力をかける可能性があることを明らかとなっているということです。

また、日本におけるビジネスと人権のテーマについては、ジャニーズ問題が挙げられるということです。ジャニーズの件では、各社が広告契約を打ち切るという対応になりましたが、ビジネスと人権という観点からは契約を打ち切るのは最後の手段であり、まずは企業に対して申し入れをしたり、実態調査を求めて対話をして行くという対応をすべきだった、という点を解説していただきました。

ビジネスと人権に関しては、2011年に、アメリカのジョン・ラギー教授が作成したビジネスと人権に関する指導原則が国連で採択されました。この指導原則は三つの柱と31の原則から構成されています。第一の柱は、人権を保護する国家の義務、第二の柱として人権を尊重する企業の責任、第三の柱として救済へのアクセスが挙げられています。この第二の柱で人権を尊重する企業の責任について触れられているので、企業として人権問題に取り組むことが非常に重要になっています。

企業の人権尊重責任として、例えば人権方針の策定が挙げられます。これは企業の経営トップが承認している社内外から専門的な助言を得ている等の手順を踏まえる必要があります。ビジネスと人権の分野では労働問題が関わることが多いです。日本でも技能実習生に対する劣悪な待遇が取り上げられていました。

日本政府は2022年9月に「責任あるサプライチェーンなどにおける人権尊重のためのガイドライン」を策定しました。この頃から大企業も一気にビジネスの人権に取り組むようになってきます。このガイドラインで着目すべき点として、企業が尊重すべき人権の主体を非常に幅広く捉えてることが挙げられます。つまり、自社の従業員だけでなく、仕入先や売り先、そういったところにも配慮しないといけません。この関係からすると、大企業は取引先である中小企業がどこから仕入れてくるのか、そういったところにも人権上の問題がないか関心を持っているということになります。

ビジネスと人権に関する一つの例として、日清食品ホールディングスはサプライチェーン上にある工場や農園を定期モニタリングして関わっている可能性のある農園や工場の名称や所在地を掲載したリストを作成して、そのリストをウェブ上に公開することにより、サプライチェーン全体における人権への負の影響の調査や防止軽減を推進していると言う取り組みが紹介されています。

中小企業も、取引先である大企業から、人権尊重しているという点での誓約書を求めることが多くなっています。中小企業としても人権問題に無関心でいることはおられません。もし人権をおろそかにする企業となれば、契約打ち切り、さらには融資の打ち切りが今後されてしまう可能性があります。

このビジネスの人権の企業向けのサービスについて、現在はコンサルタント会社が大きな影響力を持っていますが、弁護士をはじめとした適正な専門家が関与していくことの重要性も指摘されていました。

講演後、時間が少し余ったので、生成AIに関するトピックや傾聴力に関する文献のご紹介もありました。そこで紹介されていた生成AIサービス、文献やノウハウのお話自体非常に面白く、中島さんの引き出しの多さと勉強熱心さに圧倒されました。

終了後は懇親会も開催され、講師を囲んで大いに盛り上がりました。改めて中島さんありがとうございました。

次回定例会は11月26日(火)、JLP理事で弁護士の楠木さんによるM&Aにまつわるフリートークを予定しています。ふるってご参加ください!