2025年4月18日(金)、大阪産業創造館にて第229回のJLP定例会が開催されました。講師は社会保険労務士でJLP理事の竹内久司さんで、テーマは「開業3年目社労士のリアル」でした。
1 経歴と開業までの経緯
竹内さんは社労士として開業するまでに、銀行2回、オンラインゲーム会社1回、社労士事務所1回と、多様な職務経験を有しておられます。
銀行では融資や法人営業、住宅ローンのあっせん業務等の業務を経験し、その経験は現在のお仕事にも大いに生かされているようです。
2回目の銀行での勤務中、思い切って社労士の勉強を始めました。独学にもかかわらず見事1回で合格します。
2 社労士開業
社労士登録後、11か月ほど京都の社労士事務所で勤務した後、大阪市内で独立開業に至ります(スタッフは雇用しておらずいわゆるワンオペ事務所です)。
労働保険の年度更新や算定基礎届の業務を経験することなく独立を決めたことからも(社労士の参加者いわく「ふつうは考えられない」とのことでした・・!)、竹内さんの決断の速さや思い切りがうかがえます。
独立後は以下のようなところから人脈を形成しました。
- JLP活動
- 所属する社労士会の研修部等での活動
- 大阪商工会議所
- 守成クラブ
受注経路としては、士業からの紹介、 顧問先からの紹介が多いということです。
失敗談もありました。独立当初、売り上げが伸びるという宣伝文句に惹かれて高額な経営講座を受講しましたが、内容が期待外れで役に立ちませんでした。受講後半年で解約を申し出たものの、わずか数千円しか返金されないと言われました。事業者同士の契約となるのでクーリングオフ等が適用されず、相談できる先もない中、何度も交渉を行い、最後は運営元の説明と利用規約の矛盾を突いたことで、当初の提示額よりも大幅な増額を引き出して解決に至りました。失敗談としての紹介でしたが、簡単に諦めずに粘り強く相手の弱点を突いていくという対応に、竹内さんの仕事にかける真摯さや丁寧さうかがわれました。
3 社労士開業のリアル
竹内さんが分析した社労士業の強み、弱みは以下の通りです。
<強み>
- 顧問収入: 継続的な顧問契約によるストック型の収入が見込める。
- 独占業務: 助成金申請代行などは社労士の独占業務である。
- 社会的ニーズ: 労務トラブルの増加、育児・介護休業法などの頻繁な法改正により、専門家へのニーズが高まっている。
- 低コスト開業: 他の事業と比較して、大規模な設備投資が不要で初期投資を抑えられる。
<弱み>
- サービスの可視化の困難: 提供するサービスの質が外部から分かりにくく、差別化が難しい
- AIの影響: 給与計算などの定型業務はAIに代替される可能性があり、業務内容の変化が予測される。
- 競争激化: 社労士の数は増加傾向にあり、競争が激しくなっている。
- 知名度:一般における知名度が低い場合がある。
<独立にあたってのアドバイス>
まず、経済的余裕が重要です。独立当初は収入が不安定になる可能性が高いため、ある程度の期間の生活費を賄えるだけの貯蓄があると精神的な余裕が生まれます。
社労士業界は平均年齢が55.5歳と高く、特に30代の若手が少ないです。これは若手にとってチャンスといえます。助成金申請や給与計算など、企業からのニーズが大きい業務に地道に取り組むことで、安定した売上を確保することは十分に可能であるとのことです。
4 所感・学び
今回のセミナーでは、講師の多様な職務経験に基づくリアルな体験談を聞くことができ、大変貴重な機会でした。独立開業するにあたってのメリットやリスク、留意点を教えていただき、成功体験だけではない等身大の姿に共感する部分も多くありました。
改めて、竹内さん、ありがとうございました。
次回定例会は6月20日(金)19時~、テーマはクラウドファンディングです。
ふるってご参加ください。